京都市乳腺外科「仁尾クリニック」
仁尾クリニック メインイメージ

乳癌手術(日帰り手術)

手術

乳癌治療の中心は、癌組織を取り除く手術療法です。乳癌の手術というと乳房を切除しなければならないのではと 心配する人も多いと思いますが、最近では乳房の一部だけを切除する乳房温存手術が主流です。
以前は乳房全部と周囲の組織(筋肉や周囲のリンパ節)を切除する乳房切除術が常識でしたが、 乳房を残しても治療成績に差がないとわかったために、肉体的にも精神的にも負担が少ない温存療法が世界的に広がりました。

乳癌の手術というと、大変な手術のように思われるかもしれません。しかし、肺や消化器の癌手術とくらべると、身体への負担はかなり少ない手術といえます。さらに、手術器具や 麻酔法も日々進歩しています。


このため最近では、当院の様に欧米式に「日帰り」または「1泊入院」の手術をする施設も出てきており、費用の負担や時間的制約も少なくなっています。


日帰り乳癌手術

 欧米では乳癌手術の80-90%は日帰り手術で行われています。当院でも、遠方の方や拡大乳房切除を行った方を除いて、ほぼ全員が日帰り手術を受けておられます。
 一般に日本では、乳癌の手術は1-2週間程度の入院が必要とされています。しかし日本でも、温存手術の普及や麻酔法の進歩に伴い、当院のように日帰り手術を実施する施設が出てきており、今後は日帰り乳癌手術が主流になると考えられます。
 日本では乳癌の大半が腫瘍径2-3cmでみつかります。このような腫瘍径が2-3cm程度の乳癌の場合、癌の周囲を1-2cm離して切除する手術(乳房部分切除)が行われます。たとえば、2cmの乳癌の場合、余分に1cmの安全域をとって切除すれば、直径4cmの切除範囲で済み、2cmの安全域を取ったとしても、直径6cmの円形の切除範囲となり、径4-5cmの良性腫瘍の手術の場合と切除範囲はさほど違いません。
 さらに、腋の下(腋窩)のリンパ節の手術も、リンパ節転移が画像検査などで認められない場合、従来のリンパ節を全て切除する(郭清といいます)方法ではなく、乳癌に薬剤を注射して、その薬剤が流れて行くリンパ節のみを切除して転移があるかどうかを調べる「センチネルリンパ節生検」が主流になっており、従来の手術とくらべると身体への負担がかなり軽減しています。また腋窩の皮膚切開も2-4cm程度で済みます。このセンチネルリンパ節生検は、平成22年度から保険適用されています。 また、最近では、センチネルリンパ節に転移があっても、腋窩郭清をしない事が欧米では主流となって来ており、日本でも乳癌学会認定施設の20-30%では、欧米同様にセンチネルリンパ節に転移があっても郭清しない方針である事が、アンケート調査で判明しております。
 したがって、2-3cmの乳癌に対する温存手術+センチネルリンパ節生検を行うのであれば、本来は入院の必要はないのです。最近では麻酔の進歩も著しく、麻酔終了後すぐに意識の戻る薬剤も普及しています。これらの全身麻酔と局所麻酔を併用すれば、筋弛緩剤を用いて全身を麻痺させ、人工呼吸器を使用する従来の全身麻酔法を使わなくても乳癌手術は可能であり、手術後、約2時間程度休息すれば帰宅することができます。
 当院では、腫瘍径が2-3cm程度の乳癌に対して、長時間作用性の局所麻酔と全身麻酔を併用する麻酔法により、乳房温存手術(乳房部分切除)+センチネルリンパ節生検を日帰り手術で行っています。従来の全身麻酔法に比べて体への負担はかなり軽く、手術終了後すぐに起き上がって歩行できます。患者さんによっては翌日から職場復帰する方もおられます。入院が不要ですので、仕事を休めない方、自営業の方、小さな子供さんや介護の必要な家族がおられる方、などに適した手術といえます。手術は麻酔を含めて2-3時間程度です。手術後は約2時間の休息を取って帰宅できます。
 費用も、入院の場合は、2週間入院の場合、手術法や差額ベッド料金により異なりますが、通常、差額ベッド料金も含めると、3割負担の場合、約50-60万円程度の自己負担が必要です。一方、日帰り手術の場合は、手術法により異なりますが、17-20万円程度の自己負担で済みます。


乳房温存手術

温存手術は大きく分けて2種類あります。乳房円形部分切除術と乳房扇状部分切除です。

円形部分切除は、癌組織を中心にその端から1 - 2 cm離して円形に切除する方法です。 乳房の変形は少なくなりますが、扇状切除に比べて癌の取り残しの心配がやや高くなるとされています。

扇状部分切除は、乳頭を頂点にして癌のある部分を中心に乳房を1/4程度扇状に切除する方法です。 円形部分切除よりも切除範囲が大きくなるため、取り残しの可能性は少なくなりますが、変形の程度は強くなります。 ただ、円形部分切除でも癌組織が大きい場合には、切除範囲も大きくなるため変形の程度は当然強くなります。

温存療法の条件などについてはガイドラインが出ていますが、ガイドラインからはずれていても温存手術を行なっている施設が多くなっています。
ちなみに現在のガイドラインでは大きさが3cm程度までとされていますが、数年前は2cm程度までとされていました。

このように数年でガイドラインが変更されることもありますので、現在のガイドラインに固執する必要はありません。 現実には温存療法の適応はガイドラインよりも術者の技量や経験に左右されるといえます。

温存が難しいと思われる場合、すなわち大きさが5cm以上、リンパ節への転移がたくさんあるような場合、 手術前に化学療法(抗癌剤)や内分泌療法を行なって、癌を小さくしてから温存手術を行ないます。

現在までに経験した温存手術例での最大腫瘍径は11.0 cmです。当院では、原則として2cm以下の乳癌では円形切除を、 それ以上の大きさの乳癌では扇状切除を行ないますが、もちろん乳癌の場所により手術法も変わります。

当院では皮膚の切開は、原則として乳房のなかで最も傷跡が残りにくい乳輪にそって切開する乳輪外縁切開法を用います。 しかし、乳頭から遠く離れている場合は、直上に切開を加えることもあります。


腋窩リンパ節郭清

リンパ節郭清は、レベル-IからIIIまでの3段階に分類されます。


一般的には触診上も画像診断上も、腋窩リンパ節に転移がみられない場合、郭清度の一番低いレベル-I郭清が行なわれ、最も高いレベル-IIIは、腋窩リンパ節転移が明らかな場合、特に腋窩深部に転移がみられる場合に限られます。


リンパ節を郭清しても生存率が向上することはないとされていますが、腋窩郭清は局所再発率を下げる意義があるとされています。また、乳癌の病理学的stageを診断する為には、センチネルリンパ節生検が最低限必要です。

リンパ節郭清をすると術後にいろいろな障害が出ることがあります。
手のリンパ浮腫(むくみ)や肩関節の障害などです。5-10%の患者さんに出ると報告されています。 ただ、個人差が強く、郭清度が低くても障害が出る場合もあり、またレベル-IIIの郭清をしても障害が全く出ない人もあります。

当院では、別に述べるセンチネルリンパ節生検を行うことで、不要な腋窩郭清を避けるようにしています。手術中に蛍光色素法によるセンチネルリンパ節生検を行い、OSNA法による遺伝子診断にて転移診断を行い、転移なしと診断されれば、腋窩郭清を省略できます。このため、術後の障害が飛躍的に少なくなっています。

最近では、センチネルリンパ節生検で転移がみられても、明らかに転移と思われるリンパ節が認められない場合は、それ以上の郭清をする必要がないとする臨床試験の結果も報告されており、腋窩郭清については、今後さらに縮小していく可能性があります